在庫管理システムへのRFID導入の現状を導入事例から学ぶ
RFID活用の在庫管理システム
月刊自動認識2009年6月号
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月刊自動認識2009年6月号
自動認識技術としてRFIDが注目されはじめてすでに6年程度が経過しているが、当初予想されていたような爆発的な普及には至っていない。 RFID技術自体は大変魅力的な技術であるために大いに普及するであろうことは想像できるのだが、現実がそのようになっていないのは導入に対して障壁が存在するからである。 ここではRFIDの導入が比較的やりやすいと考えられる在庫管理業務についてRFIDシステム導入への壁とは何かをまず認識し、それを超えてどのように導入していくのかを導入事例を紹介しながら考えてみたい。
RFID導入への壁
RFIDを利用した在庫管理システムの導入への壁とはどのようなものだろうか。 これまでの経験からいくつか挙げてみたい。
コスト |
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一番はシステム導入にかかる費用である。
費用の内容としてはICタグの費用、リーダ・ライタなどのRFID機材費用、システム開発費用などがあるが、どれもま だまだ高額である。
ICタグの費用は現在数十円程度であるが、個品単位に貼るには個品自体が高額なものでないと採算が合わない。
またICタグ自体をそのまま使用できるような状況は稀で、表面に印字するためラベルタイプにしたり、屋外用に濡れてもいいような加工にしたり、
金属面に貼っても読めるようにしたりなど多くの場合はICタグを加工して使用するため、どうしても単価が高くなってしまう。
リーダ・ライタなどのRFID機材もまた高価だ。
据置 型で1台40万程度、ハンディ型で1台30万程度かかる。
在庫管理では倉庫のどこに何があるのかをリアルタイムに把握できることが理想なのだが、
それを実現させるためには非常にたくさんのリーダが必要となり、費用も莫大なものとなってしまう。
システム開発についても、RFID関連のパッケージ製品がまだ少ないため業務に合ったシステムを導入するためにはシステム開発を行うことが必要となる。
加えてRFIDの技術に精通した技術者を確保するのは難しく、それが費用に反映され高額となる。
コストがかかっても、それに見合う収益の増加が見られればまったく問題ないのだが、在庫管理という業務にRFIDを適用する場合には大きな効果があったとしても業務の改善というレベルにしかならず、
収益を大幅に上げることを見込めるような場面は非常に少ない。 |
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経験不足 |
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RFIDの技術に対する経験不足も導入時の壁となる。
現在使われているRFIDの種類としては主に13.56MHz帯、2.45GHz帯、UHF帯の3種類があるが、在庫管理の分野で期待されるのは一括検品などを可能にするUHF帯など通信距離が長いものである。
しかしながら通信距離の長いRFIDの技術はまだ一般的とは言えない。
SUICAやEdyなどの電子マネー分野ではRFIDが普及しているが、それらは近距離通信であるためほとんど接触に近い。
このため遠くにあるICタグを読むことができる、通信距離の長いRFIDでは想定外のことが発生する。
リーダでICタグを読取ってもどのICタグを読んだのかわからない、電波の反射や回り込みで予想外の場所にあるICタグを読んでしまった等の問題である。
電波は目に 見えないので、このような問題はさらにややこしい事態へと発展してしまう。
また、思ったほど読めないという状況も多い。
まず金属は厳しい、周りの棚などが金属の場合や人体に接触しているような場合も読取り辛いなど実際の環境で試してみないとわからないのが現状である。
予想外のICタグを読んでしまったり、予想内のICタグを読まなかったりするような状況でシステムを構築することは非常に難しい。 |
壁を越える取り組み
当社ではこのような壁を越えるために開発を行ったパッケージ製品である『MANICA』シリーズを販売している(表1)。
名称 | 内容 |
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MANICA | ハンディリーダを活用した在庫管理システム |
MANICA Lite | スタンドアロンでの使用を想定した簡易バージョンハンディリーダとタグがセットになって税込36万円 |
MANICA EXCEL TOOL | EXCELにICタグの読込み機能を追加するフリーソフト |
そのコンセプトは以下の通り。
・ハンディリーダを有効活用
ハンディリーダを有効に活用することで、3つのメリットがある。
1、 導入機材を減らす。 |
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ハンディリーダは人が持って移動できるため、移動ができない据置型を複数設置することを極力少なくすることができる。
それにより導入機材を減らし、導入コストを下げることができる。 |
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2、予想外のICタグの読込みを防ぐ。 |
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据置型は電波の出力が強いので予想外のICタグを読込んでしまうことがあるが、ハンディリーダは出力を抑え、読みたいと思うICタグを読むことができるので、予想外のICタグを読む可能性が低くなる。 |
![]() 図1 |
3、入力を簡素化する。 |
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MANICAは特定のICタグに出庫や入庫などの機能を持たせることで入力を簡素化するような仕組みになっている。
このように特定の機能を持たせたICタグをアクションタグと読んでいる。
例えばハンディリーダで製品1、製品2、製品3のタグを読み、続けて出庫アクションタグを読込んだ場合、システムは製品1、製品2、製品3の出庫処理を行う。
この仕組みによって画面での入力作業を省略し、「ICタグを読む」という動作から行いたい作業を特定して処理を行うことができる。(図1、図2) |
![]() 図2 |
・既存システムを有効活用 |
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既存システムに後付けできるような設計になっており、既存システムをそのまま利用しながらRFIDの技術を取り込むことができる。
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・すぐ導入 |
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EXCELにハンディリーダと連携する機能をつけることができるソフト『MANICA EXCEL TOOL』を提供している。
EXCELで在庫管理を行っている場合はこのソフトを導入することですぐにICタグ在庫管理を開始できる。
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導入事例 ~日本トランスユーロ様
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写真1 エコBOX
手軽にIC タグシステムを導入可能な『MANICA EXCEL TOOL』の導入事例として、日本トランスユーロ様の事例を紹介する。
日本トランスユーロ様は日本と欧州のフランス、ベルギー、英国の海外引越しを行われており、環境対策として引越しの際に用いる資材を反復資材とする取り組みを積極的に行われている。
その反復資材の1つとしてガラス製品などの割れ物を安全にすばやく運搬するためのエコBOX(写真1、写真2)があり、まずはこのエコBOX をIC タグにより管理することを開始された。
このことによりエコBOX の紛失や誤配送を防ぐのが目的である。
1、エコBOX の登録 |
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まずはじめにエコBOX の登録を行う。EXCEL で管理しているので登録作業はEXCEL 表に1行追加すると完了する。
IC タグの登録もここで行う。
IC タグをエコBOXに貼り、『MANICA EXCEL TOOL』の「セルへ入力」機能を使ってEXCEL に入力する(図3)。
IC タグには製造時にユニークなID が書き込まれているのでそのID をその まま利用する。 |
![]() 写真2 出荷前のエコBOX ![]() 図4 |
2、エコBOX の出荷 |
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『MANICA EXCEL TOOL』を「セルを探す」機能にし、出荷するエコBOX のIC タグを読込んでいく。
読込んだIC タグのセルが色づけされていくので、どのエコBOXが出荷されるのかがわかる(写真3、図4)。 |
![]() 写真3 出荷時の日本側での読込み ![]() 図4 出荷処理(タグを読み込むと色が変化) |
3、エコBOX の入荷 |
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エコBOX 搬送後、再度「セルを探す」機能でエコBOXのIC タグを読込んでいく。これにより足りないエコBOXなどの確認が可能となる(写真4、図5)。 上記作業を繰り返すことでどのエコBOX が現在どこで使用されているのかが管理できる。 日本トランスユーロ様では今後エコBOX に続き様々な反復資材の管理を行うよう拡大を計画されている。 |
![]() 写真4 EU側での操作画面 ![]() 図5 入荷処理(届いたエコBOXを読み込と、足りないものが色で確認可能) |
機器名 | メーカー | 製品 |
1.ハンディ型RFIDタグ読取装置 | パナソニック(株) | ![]() UHF帯RFID対応ハンディターミナル |
2.ハンディ型RFIDタグ読取装置 | サイオン・テクロジックス |
![]() UHF帯RFID対応ハンディターミナル |
3.RFIDタグ | エイリアンテクノロジー社 |
![]() エイリアン社 UHF帯ICタグ |